兰
何とか我慢しよう、とひさしは思った。父親に訴えたところで、父親も困るだろう。楊枝もなければ痛み止めの薬があるわけでもない。ところが、改めて当りを見回してみて、目覚めているのがどうやら自分ひとりと分かると、痛みは
耐え難いつのってきた。窓の外の景色に気を紛らせるというわけにもいかないし、嗽に立つことも出来ない。
ひさしは、眠っているらしい人たちに気を遣って声を立てず、指で父親の膝をつついた。驚いて目を開いた父親に、ひさしは片頬を片手で押さえて、しかめっ面をして見せた。 「歯か?」
と即座に父親は反応した。眉の間に皺を寄せたままひさしはうなずいた。
父親は、困った、という表情になったが、困った、とは言わなかった。その表情を見た途端、ひさしは、
「何か挟まっているみたいだけど、大丈夫、取れそうだから。」
と言ってしまった。」取れそうな気配もなかった。
今度はひさしのほうが目を閉じた。あと一時間半の辛抱だ。そう自分に言い聞かせて、自分の手をきつく抓った。
いっときして目を開くと、父親が思案顔で見詰めている。
「まだ痛むか?」
ひさしは、息を詰めたくなるような痛さにいっそう汗ばんでいたが、
「少しだけ。」
と答えた。
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